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睡眠

レム睡眠とノンレム睡眠

睡眠を客観的に調べるには、「ポリソムノグラフィー」と呼ばれる検査装置が使われているそうです。これは、脳波、筋電図、眼球電図、心電図などを同時に記録するもので、このような生理学的な指標にもとづいて睡眠ステージが判定されています。この指標の中で、とくに「脳波」が重要な指標だといいます。

では、レム睡眠から見ていきたいと思います。

レム睡眠時の脳波は、覚醒時(目覚めている時)の脳波と似ているそうです。大脳皮質は活発に活動しており、そして私たちはあの鮮明な夢を見ています。しかし、夢の中の行動を実際に行うことはありません。体は動かない状態になっているのです。

レム睡眠時の大脳皮質は覚醒時と同等か、あるいはそれ以上に活動しているため、脳波は覚醒時と非常によく似た、低振幅の速波である。(中略)また、レム睡眠時には脳幹から脊髄にむけて運動ニューロンを麻痺させる信号が送られているため、全身の骨格筋は眼筋や耳小骨(中耳の小さな骨)の筋肉、呼吸筋などをのぞいて麻痺している。そのためレム睡眠時には脳の命令が筋肉に伝わらないので、夢の中での行動が実際の行動に反映されることはない。ただ眼球だけは、不規則にさまざまな方向に動いているのだ。

『睡眠の科学・改訂新版』62ページ/櫻井武/講談社/2017年

レム睡眠時の眼球は、急速かつ不規則に動いており、これは「急速眼球運動(rapid eye movement)」と呼ばれています。急速眼球運動(略語REM)をともなう眠りであるため、この睡眠ステージは、レム(REM)睡眠と名づけられたのです。

また、レム睡眠時は、感覚系から脳への入力が、中継点の視床で遮断されるといいます。上述の『睡眠の科学・改訂新版』の櫻井武氏は、レム睡眠をつぎのように表現しています。

つまりレム睡眠時は、脳へのインプット(感覚)と脳からのアウトプット(運動)が、インターフェースのレベルで遮断されてしまっていることになる。いわば〝オフライン〟の状態といってもよいだろう。

『睡眠の科学・改訂新版』28ページ/櫻井武/講談社/2017年

つまり、レム睡眠時は、感覚や運動が〝オフライン〟の状態で、大脳皮質は覚醒時と同等か、あるいはそれ以上に活動しています。これが、レム睡眠の大まかなイメージです。

では、もう一方のノンレム睡眠はどうでしょうか。

ノンレム睡眠は、前述したように4つ(ステージ1~4)に分けられています。それぞれのステージの脳波については割愛します。(興味のある人には、『睡眠の科学・改訂新版』をおすすめします)。ここでは、ステージ3や4のような深いノンレム睡眠時の脳波は、「高振幅徐波」であることのみ記しておきたいと思います。つまり、レム睡眠(低振幅の速波)と深いノンレム睡眠では、脳波はまるで異なっているのです。

つぎに、ノンレム睡眠時の感覚と運動を見てみましょう。

ノンレム睡眠時は、感覚系は遮断されているわけではありませんが、感覚を処理する脳機能が低下しているため、覚醒時のように処理ができません。また、運動に関しても、ノンレム睡眠時は運動できる状態にありますが、運動機能をつかさどる脳領域が全身の筋肉に命令することが少なくなっているので、筋の活動も少なくなります。

櫻井武氏の表現を用いれば、ノンレム睡眠時は、感覚や運動が〝オンライン〟の状態ということになります。ですが、大脳皮質の活動は低下している状態です。

上のように、睡眠と一口に言っても、レム睡眠とノンレム睡眠では脳と身体の状態はまったく異なっています。ここに挙げた以外にも(たとえば呼吸数や心拍数など)、さまざまな違いがみられます。

参考文献
『睡眠の科学・改訂新版』/櫻井武/講談社/2017年
『ヒトはなぜ人生の3分の1も眠るのか?』/[著]ウィリアム・C・デメント/[訳]藤井留美/講談社/2002年

初出:2019年09月27日