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睡眠

睡眠負債とは何か

睡眠負債のイメージ

最近、「睡眠負債」という言葉をよく耳にします。「睡眠負債」と聞くと、まるで睡眠がお金のように思えてきます。この「睡眠負債」とは、蓄積した睡眠不足のことだそうです。では、睡眠不足は「借金」のようなものなのでしょうか? どうやらそのようで、睡眠負債は必ず返済しなければならないといいます。

蓄積した睡眠不足のことを「睡眠負債」と呼ぶのは、それがお金の負債と同じで、いつか返済しなければならないからだ。負債額が大きいと、それだけ危険な影響も増大する。

『ヒトはなぜ人生の3分の1も眠るのか?』50ページ/[著]ウィリアム・C・デメント/[訳]藤井留美/講談社/2002年

睡眠負債がたまり続けると、次第に気分や活力、認知能力などが蝕まれていくとデメント氏は警告しています。

では、睡眠負債を抱えないためには何時間眠ればよいのでしょうか。「8時間」という答えを聞いたことがある方も多いかもしれません。ですが、本当のところは「人それぞれ」のようです。睡眠には個人差があるので、「眠気」を基準にして、睡眠不足かどうかを判断するのがよいそうです。

あなたが翌日、眠気を感じずに、すっきりと過ごせるだけ眠ればよい

『睡眠の科学・改訂新版』187ページ/櫻井武/講談社/2017年

櫻井武氏は「睡眠時間の必要性は個人によって大きな差があるのだ」と記しています。そして、「眠気」は、睡眠不足のバロメーターの役割を果たすと述べています。

本、テレビ、インターネット上、たくさんの睡眠情報がありますが、シンプルに考えて、眠りに神経質にならないことが大事なようです。

「何時間寝なくちゃ……」と考えることは、皮肉だが逆に、睡眠に不安を持ち込むことになり、眠りに悪影響を及ぼしかねないので、あまりこだわらないほうがよいだろう。

『睡眠の科学・改訂新版』188ページ/櫻井武/講談社/2017年

このような見解は、他の睡眠研究者も述べています。井上昌次郎氏は、つぎのように記しています。

睡眠をちゃんと知って、睡眠を楽しんだり、あるいは、だいじにしたりということは、ひとことでいえば、「あまり気にしない」ということですね。
(中略)
快眠するための正解は、たくさんあります。自分のいまの生活に、最もふさわしい寝起きのパターンを、自分なりに創案すればよいのです。

『眠る秘訣』223、224ページ/井上昌次郎/朝日新聞出版/2009年

眠りは人それぞれだと信頼できる睡眠研究者たちは述べています。何時間眠れば睡眠負債を抱えずにすむのかは、人によって異なるのです。結局のところ、「眠気」という脳の声に耳を傾ければよいのでしょう。そして、自分が睡眠負債を抱えているようだったら返済する。じつにシンプルで、最も信頼できる考え方ではないでしょうか。

参考文献
『ヒトはなぜ人生の3分の1も眠るのか?』/[著]ウィリアム・C・デメント/[訳]藤井留美/講談社/2002年
『睡眠の科学・改訂新版』/櫻井武/講談社/2017年
『眠る秘訣』/井上昌次郎/朝日新聞出版/2009年

初出:2019年10月14日