「JR東海のキャンペーン(1993年〜)」のキャッチコピーを考察
キャッチコピーの事例を取り上げる第6回は、1993年から続く「JR東海のキャンペーン」のキャッチコピーです。
そうだ 京都、行こう。
このキャッチコピーは、もし、「京都、行こう」だけだったら採用されないはずなので、「そうだ」があるからこそキャッチコピーとして成立しているのがわかります。なぜ成立するのかを考えてみると、一つは、「そうだ」によって、人の感情が生活シーンとして表現されるからではないでしょうか。京都に行くことを思いつき、そう決めた人の姿が浮かんできます。
もう一つは、「そうだ」がポジティブな言葉だからだと思います。何か良い考えがひらめいた時などに、私たちは「そうだ」とよく言います。そのため、「京都に行くことが良いひらめき」であることを、私たちは無意識的に受け取ることになるのではないでしょうか。
このように考えてみると、「日常で使う短い言葉(とくにポジティブな言葉)を付加して、人の感情を生活シーンとして描く」、というキャッチコピーの作り方がありそうです。
ただし、「そうだ 地名 XXX」の型はもう使えないですね。JR東海のイメージが強すぎますので。でも、「そうだ」ではない別の言葉を探すなど、考えるヒントになりそうな気がします。
コピーライターは、太田恵美さん。
太田恵美さんのインタビュー記事(ACCの「広告ロックンローラーズ」)に書いてありますが、もともとは「そうだ 京都に行こう。」で考えられていたようです。「、」ではなく「に」だった。でも、話す時にはふつう、「ごはんを食べよう」とは言わずに「ごはん食べよう」と言う。同様に考えて、「に」が外されることになったそうです。外したのは、クリエイティブディレクターの方だったようです。この記事から、「普段の話し方に近づけるかどうか」ということもキャッチコピーを作る際に考慮する要素の一つと言えそうです。
上に、「そうだ」によって人の感情が生活シーンとして表現される、と書きましたが、「に」を外して、普段の話し方に近づけたことによって、リアルな生活シーンになったのではないでしょうか。「に」の有無で印象が違う気がします。
今回のまとめは、「日常で使う短い言葉(とくにポジティブな言葉)を付加して、人の感情を生活シーンとして描く」というキャッチコピーの作り方が考えられるのではないか、その場合、普段の話し方に近づけると効果が増しそう、といった感じです。