「新潮文庫の100冊」(1984年頃)のキャッチコピー(ショルダーコピー)を考察
キャッチコピーの事例を取り上げる第11回は、「新潮文庫の100冊」(1984年頃)のキャッチコピー(ショルダーコピー)です。
想像力と数百円
コピーライターは糸井重里さんです。名コピーの中でも、最も有名なコピーの一つですね。今回は、このキャッチコピーをもとに、キャッチコピーの作り方を考えてみたいと思います。
「想像力と数百円」にインパクトがあるのは、「想像力」と「数百円」のギャップが大きいからではないでしょうか。そのギャップは二つあると思います。
一つは、価値のギャップです。「想像力」というのは素晴らしいものだと、おそらく多くの人が認識しています。とくに本を読む人ほど「想像力」に価値を置いている気がします。その価値の大きさに比べると、「数百円」の価値は多くの人にとって大きくない。この対比が効いているのではないでしょうか。わずか数百円で価値あるものが手に入るようなイメージが一瞬にして喚起されます。
もう一つは、連想の範囲にない組み合わせ、というギャップです。「想像力」と「数百円」という言葉は、ふつう同じ文脈で用いられないと思うんですよね。たとえば「想像力と小説」「想像力とアート」だったら普通です。優れた小説を書くには(アートを生み出すには)想像力に磨きをかける必要がある、といった平凡な文が数秒で浮かびます。また、「数百円」と聞いて何を連想しますか、と問われれば、(このキャッチコピーが生まれる前だったら)「想像力」と答える人はまずいないでしょう。そのような一般的な連想の範囲にない組み合わせ、というギャップです。
このようなギャップが、インパクトをもたらすのではないでしょうか。
今回のまとめは、価値のギャップを作り出す、一般的な連想の範囲にない組み合わせを作る、というキャッチコピーの作り方があるのではないか、です。もう一つ付け加えれば、お金など数字の力を生かしてキャッチコピーを作る、という作り方もありそうですね。