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キャッチコピーの事例

日本郵政グループのキャッチコピーを考察

キャッチコピーCase No.25 見慣れた言葉で独自性

キャッチコピーの事例を取り上げる第25回は、日本郵政グループのキャッチコピーです。

進化するぬくもり。

コピーライターは、野澤幸司さん。

日本郵政グループは、『お客さまと地域を支える「共創プラットフォーム」の実現』を目指しており、2022年4月1日より「進化するぬくもり。」をキャッチコピーに、コミュニケーションを展開しています。

「JP CAST」(郵便局の魅力を発信するメディア)には、2024年2月現在、このキャッチコピーに込められた想いがつぎのように記されています。

『この言葉には、郵便局らしさである「身近」、「何でも相談できる」、「やさしい(優しい・易しい)」といった価値を『ぬくもり』という言葉で表現し、お客さまにはその『進化』を感じていただきたい。そして、これまで以上にお客さまと地域のための郵便局となり、時代に合わせてより良く変わっていく日本郵政グループと商品・サービスを愛していただきたい、そういった想いを込めています。』

日本郵政グループのキャッチコピーのキーワードが「ぬくもり」というのは、ぴったりだと思います。郵便局は高齢者にやさしいですね。郵便局に行ったときに、従業員が高齢者に親身に応対しているのを何度も見たことがあります。ゆうちょ銀行のほうが都市銀行よりも利用しやすいという高齢者の方も多いのではないでしょうか。そんな印象を私は持っています。

もう一つの「進化する」という言葉は、上述の「時代に合わせてより良く変わっていく」という部分を訴求しています。このような「進化する、変わる、変える」といったアピールは多くの企業が行っていますが、このキャッチコピーは、「進化する」という言葉を、普段同じ文中で使われることがない言葉(ぬくもり)と組み合わせることによって、独自性をつくり出しています。

「ぬくもり」は、一般的には「いつまでも変わらないもの」というイメージではないでしょうか。「変わらないぬくもりを」的な使われ方です。「進化するぬくもり」は、それとは逆です。そのため、「進化する」も「ぬくもり」もよく見かける言葉でありながら、その組み合わせは独自性を打ち出せるのだと思います。

当コンテンツの目的は事例を集めて、キャッチコピーの型や作り方を自分なりに考えてみることですが、今回のキャッチコピーは、前に書いた、「一般的な連想の範囲にない言葉の組み合わせを作る」という作り方の一例でもあります。見慣れた人気ワードの組み合わせであっても、普段同じ文中で使われない組み合わせならば独自性のあるキャッチコピーになりそうです。

初出:2024年02月23日