モンテッソーリ教育とは何か【簡単まとめ】
「モンテッソーリ教育」という言葉をはじめて聞いて、どんな教育なのかと興味をもった方に向けて、その要点を簡単にまとめました。日本において、モンテッソーリ教育は幼児の教育方法として注目を集めていますので、そこにフォーカスしています。書籍を参考にしていますので、もっと知りたくなった方は、参考文献にあたることでより詳しく理解できます。
目次
モンテッソーリ教育はなぜ脚光を浴びたのか
日本では、2017年に公式戦29連勝の新記録を樹立した将棋の藤井聡太棋士がモンテッソーリ・メソッドを取り入れた幼稚園に通っていたことが報道されて注目を集めました。世界に目を向けると、錚々たる人物たちがモンテッソーリ教育を受けていることも、高い関心を集めた理由のようです。
モンテッソーリ教育を受けた著名人
Google創業者のラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン、Amazon.comのジェフ・ベゾス、Wikipediaを始めたジミー・ウェルズ、Facebook創業者のマーク・ザッカーバーグ、作家のアンネ・フランク、政治家のクリントン夫妻やバラク・オバマ、俳優のジョージ・クルーニー、ワシントン・ポスト経営者でジャーナリストのキャサリン・グレアム、経営学者のピーター・ドラッカー、世界的チェリストのヨーヨー・マ、など。(敬称略)
参考:『子どもの才能を伸ばす最高の方法モンテッソーリ・メソッド』(堀田はるな/あさ出版/2018年)
モンテッソーリ教育はいつ・どのように始まったのか
モンテッソーリ教育は、イタリアの女性医師であるマリア・モンテッソーリ(1870ー1952年)によって開発されました。
彼女は、まず知的障害児の教育で成果を挙げます。イタールやセガンの方法を基本とし、五感の発達を促進する教具を用い、また、読み書きの教育においては独創的な方法を試すなどして、知的障害児の教育に取り組みました。すると、公の試験において知的障害児が健常児と同等の成績を収めたのです。
モンテッソーリは、知的障害児に用いた教育方法を、幼い子ども(健常児)にも適用できると考えました。
1907年にローマのサン・ロレンツォ地区に設立された「子どもの家」には、3~6歳までの健常児たちが集められていました。ほったらかしにされて育ち、おずおずとした、不安で、よく泣いている、うつろな目をした子どもたちだったそうです。
しかしモンテッソーリが、知的障害児の教育で試みたように、五感の発達を促進する教具を用意するなど、子どもを観察することによって得た発見に基づいて環境を整えていくと、子どもたちは見違えるほどの素晴らしい変化を遂げました。それは評判になり、たくさんの人々が見学に訪れたそうです。この教育方法は本にまとめられ出版されました。このようにしてモンテッソーリの教育メソッドは誕生しました。
なお、マリア・モンテッソーリは、「イタリア初の女性医師」と紹介されることが多いのですが、『マリア・モンテッソーリと現代』(前之園幸一郎/学苑社/2007年)によると、イタリアで最初の女性医師ではないそうです。
モンテッソーリ教育の考え方
マリア・モンテッソーリは、教育とは「生命に与えなければならない援助」と述べています。
教育とは、生命自身が持つ力の偉大さによって発達するよう、私たちが生命に与えなければならない援助です。
生物の幼少期には自己を発達させる特別な生命力が内包されており、その内部から生じてくるエネルギーによって子ども自らが自身を発達させることを援助する、これがモンテッソーリの考えです。
具体的には、子どもは環境からの刺激を捉えて自らを成長させていきます。幼い子どもは自身の能力を獲得するために、ある限られた期間に、環境の特定の要素に対する感受性が特別に高まるといいます。モンテッソーリは、これを「敏感期」と呼び、教育に利用しました。
彼女は、子どもと大人では異なる精神形態をもっていることを強調しています。そして、幼い子どものもつ特別の精神形態を「吸収する精神(吸収する心)」と呼んでいます。これは、幼い子どもと両親が外国で暮らすことになった際の言語習得能力の違いを思い浮かべるとわかりやすいのではないでしょうか。
モンテッソーリ教育では、子ども自らが内部から生じてくるエネルギーによって自身を発達させることを、三つの要素ーー適切な環境・控えめな教師・科学的教材ーーを整えることによって援助する、と考えます。
モンテッソーリ教育の「敏感期」とは
幼い子どもは自身の能力を獲得するために、ある限られた期間に、環境の特定の要素に対する感受性が特別に高まるとして、これを「敏感期」とモンテッソーリは呼びました。
『ママ、ひとりでするのを手伝ってね!』では、そのポイントをつぎのように説明しています。
「敏感期とは」という場合、次の三つのポイントをおさえて説明することが必要です。
・生物の幼少期に、ある能力を獲得するために
・環境中の特定の要素に対して
・それをとらえる感受性が特別に敏感になってくる一定期間である。
では、子どもは具体的にどのような振る舞いを見せるのでしょうか。『モンテッソーリ教育で子どもの本当の力を引き出す!』では、つぎのように述べています。
「敏感期」とは、子どもが、何かに強く興味を持ち、集中して同じことを繰り返す、ある限定された時期のことを指します。
モンテッソーリは、この「敏感期」を重要視し、教育に利用しました。
モンテッソーリ教育の「教具」と「お仕事」とは
モンテッソーリ教育の「教具」は、おもちゃとどこが違うのでしょうか。『モンテッソーリ教育で子どもの本当の力を引き出す!』では、つぎのように説明しています。
……「おもちゃ」は自由気ままに扱えて、様々な使用目的を持っています。それに対して、「教具」は、子どもの成長ごとに分けられ、目的を一つに絞って作られている点において、おもちゃとは一線を画する存在なのです。
教具は、子どもの成長を援助するために、その目的を一つに絞って作られており、教具ごとに使い方も決まっているそうです。
子どもたちは自由に教具を選び、自身を成長させるその活動に集中します。この活動を「お仕事」とモンテッソーリ教育では呼んでいます。
モンテッソーリ教育を知るための書籍(参考文献)
『子どもの発見』(新装版)
- 著 者:マリーア・モンテッソーリ
- 訳 者:鼓常良
- 出版社:国土社
- 出版年:1992年6月
マリア・モンテッソーリの主著と言われている一冊です。
『幼児の秘密』(新装版)
- 著 者:マリーア・モンテッソーリ
- 訳 者:鼓常良
- 出版社:国土社
- 出版年:2003年3月
「敏感期」についての考えが明確に書かれています。
『1946年ロンドン講義録』
- 国際モンテッソーリ協会(AMI)公認シリーズ02
- 著 者:マリア・モンテッソーリ
- 編:アネット・ヘインズ
- 訳 者:中村勇
- 監 修:AMI友の会NIPPON
- 出版社:風鳴舎
- 出版年:2016年10月
教育とは生命への援助、吸収する精神など、モンテッソーリの考えについてわかりやすく書かれています。
『ママ、ひとりでするのを手伝ってね! ーーモンテッソーリの幼児教育ーー』
- 著 者:相良敦子
- 出版社:講談社
- 出版年:1985年6月
著者は長年にわたり、モンテッソーリ教育を説明してきた第一人者。本書では、モンテッソーリ自身の基本的な考え方を紹介しながら、モンテッソーリ教育をやさしく解説しています。
『モンテッソーリ教育で子どもの本当の力を引き出す!』
- 知的生きかた文庫
- 著 者:藤崎達宏
- 出版社:三笠書房
- 出版年:2017年11月
著者は、日本モンテッソーリ教育研究所認定教師(0~3歳)・国際モンテッソーリ教育協会認定教師(3~6歳)です。本書では、「超入門」としてモンテッソーリ教育の概要を伝え、子どもの発達段階に沿って子育てのアドバイスをしています。
『子どもの才能を伸ばす最高の方法モンテッソーリ・メソッド』
- 著 者:堀田はるな
- 監 修:堀田和子
- 出版社:あさ出版
- 出版年:2018年3月
著者は「モンテッソーリ原宿子供の家・モンテッソーリすみれが丘子供の家教員、保育士」です。モンテッソーリ・メソッドとはどのようなものか、モンテッソーリ・メソッドでは子どもの育ちをどのようにサポートするのかを紹介しています。
『マリア・モンテッソーリと現代 ー子ども・平和・教育ー』
- 著 者:前之園幸一郎
- 出版社:学苑社
- 出版年:2007年8月
マリア・モンテッソーリの思想と人間像について、その時代背景も踏まえて論じています。著者はローマ大学(教育学部)に留学した際に、モンテッソーリ教育の実際を見学しています(1967年)。それをきっかけに興味を抱き、後にモンテッソーリの思想と人間像についての論文を発表。それをまとめたものが本書です。