【ブックレビュー】『老舗書店「有隣堂」が作る企業YouTubeの世界』(有隣堂YouTubeチーム/著)
有隣堂のYouTubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界」が、30万人超えのチャンネル登録者数(2024年10月時点)を実現しています。本書では、その立ち上げメンバーとなった社員(著者)が、悪戦苦闘しながら登録者数20万人超えを達成するまでの軌跡を「正直につづって」います。著者はまえがきの中で「YouTube運営の裏側(ポンコツ奮闘記! 笑)」という表現を用いていますが、その奮闘ぶりがビジネスを舞台にしたヒューマンストーリーとして、とてもおもしろいです。
現・社長の一声でYouTubeを始めることになったものの、著者はほとんどYouTubeを見たことがなく、知識ゼロからのスタート。まずトライアルとして定めた3か月間に制作会社の協力を得ながら「書籍の紹介動画」を6本アップしますが、チャンネル登録者はわずか200人ほどで、再生回数も「散々な数字」という結果に。
そのような状況の中、社長の古くからの知り合いである動画クリエイターをプロデューサーに迎えて、リニューアルすることになります。どのように変更したのか、人気を博しているキャラクター「ブッコロー」の誕生秘話、リニューアル後の初回動画がどのように作られたかなど、「運営の裏側」がつづられていきます。その際の著者の心情や思考、登場する人たちの人間性がくっきりと浮かび上がって伝わってくるところが、私にとっての本書のおもしろさでした。
YouTubeチャンネルを立ち上げるための参考書として、また、苦闘しながら前向きな思考で前進していくビジネスパーソンのヒューマンストーリーとしても読むことのできる一冊ではないでしょうか。
初出:2024年10月10日