文章の読み書き能力を鍛える方法【新聞社説の縮約・要約】
1999年に出版されてベストセラーとなった『日本語練習帳』(著者:大野晋/岩波書店)という本があります。その中に書かれている、文章の読み書き能力を鍛える練習の一つをご紹介したいと思います。それが、記事タイトルの【新聞社説の縮約・要約】です。
この作業について、著者はつぎのように記しています。
すでに小説や評論や記事を書き馴れている方にはこれは無用のことです。しかし、これから文章がよく読めるようになりたい、達意の文章が書けるようになりたいと思う学生や世間の人々には、これはたぶん役に立つでしょう。
まずは、「縮約」です。同書には、1400字の社説を400字に縮約する課題があります。
縮約と要約は違います。縮約とは、「地図で縮尺というように、文章全体を縮尺して、まとめること」(同書)です。
縮約のやり方は、以下の通りです。
1行20字詰20行の原稿用紙を使います(パソコンなどのアプリでそのように設定してもよいでしょう)。大切なことは、ぴったり20行にまとめることです。400字から1字はみ出してもいけません。句読点は1字分取ります。題目は字数外。途中に段落をつけ、改行します(全文を段落なしに書き続けてはいけません)。
そして、縮約したものは、「一つのまとまった文章として読めるもの」であること。
縮約が完成したら、つぎは、縮約した400字の文章を200字に「要約」します。
この練習に取り組んでみたいと思ったら、同書を一読してみるとよいでしょう。課題に取り組み、著者の記した答えを読むと、やり方がよくわかると思います。
この練習は、読み書きの能力がかなり鍛えられるのではないでしょうか。30回すると有効だそうです。また、同書には、「……人生・社会を見る目の幅を広くする」、「語彙が増える」といった、他のメリットも挙げられています。
もし私が、読み書き能力を鍛えたいと思っている中高生あるいは大学生だったら、新聞社説の縮約・要約に取り組んだと思います。
縮約は、読書感想文よりも生徒の文章の力を養う。同書には、そのような主旨のコラムもありました。