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本と書評

【本の紹介・書評】実践例で学ぶ。『「売る」から、「売れる」へ。水野学のブランディングデザイン講義』

著者・水野学(みずの まなぶ)氏は、good design company(グッドデザインカンパニー)代表で、クリエイティブディレクター、クリエイティブコンサルタント。

本書は、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスで行われた講義「ブランディングデザイン」(全14回/2014年9月~2015年1月)のうちの主要な4回をもとにその内容を編集してつくられています。

水野学氏は1年浪人して多摩美術大学のグラフィックデザイン科に入り、卒業後はデザイナーとして就職。25歳で退職。1998年にグッドデザインカンパニーをつくる。とくに有名なデザイン会社で下積みしたわけではなく、「文字どおり、〝パンツ一丁〟でゼロから自分で」やってきたそうです。

これまでの仕事には、「iD」(NTTドコモのサービス)、「東京ミッドタウン」(三井不動産が開発)、「中川政七商店」、「TENERITA(テネリータ)」、「茅乃舎」(久原本家)などのブランディングがあり、また、首都高速道路「東京スマートドライバー」、宇多田ヒカルさんのアルバムのアートディレクション、「くまモン」のキャラクターデザインなどがあります。他にも、さまざまな実績を持ち、自身も「THE」というブランドを展開しています。

幅広い仕事をしていますが、その内容は「デザイン」と「企業のコンサルティング」に大別でき、コンサルティングは、企業の課題を「デザインの視点から解決するお手伝い」だといいます。そして、つぎのように記しています。

詳しくは、これからの講義を通じて説明していきますが、デザインの力を使ってブランドの力を引き出し、商品を「売る」のではなく「売れる」ように仕向けるのが、コンサルタントとしてのぼくの仕事です。

この考え方こそが「ブランディングデザイン」だといいます。これが、講義(本書)のテーマです。

では、ブランドとはなにか。どのようにブランディングに取り組めばよいのでしょうか。

著者は、「ブランドとは〝らしさ〟である」といいます。その構築を、河原で「小さな石が微妙なバランスでいくつも集積されて、ひとつの山をつくっていく」ことに喩えています。1個の大きな石ではない。さらに、「ブランドとは、見え方のコントロールである」とも述べています。

ブランディングにどう取り組むかは、「中川政七商店」「東京ミッドタウン」「宇多田ヒカルさんのアルバム」といった事例をもとに、著者の思考過程を示しながら、具体的に語っています。

また、「茅乃舎」のシンボールマークを提案したときの企画書を見せながら、プレゼンについても説明しています。

このように著者が手がけた事例がいくつも紹介されており、その実践例を見ながらブランディングを学べるのが本書の魅力です。

初出:2019年01月10日更新:2025年01月29日