【本の紹介・書評】『いちばん大切なのに誰も教えてくれない段取りの教科書』(水野学)
『いちばん大切なのに誰も教えてくれない段取りの教科書』
著者:水野学
出版社:ダイヤモンド社
出版年:2018年10月
著者の水野学氏は、中川政七商店、相鉄グループ、茅乃舎(かやのや)のブランディングや、熊本県公式キャラクター「くまモン」のデザインなどを手がけているクリエイティブディレクター。
さまざまな業種の仕事に携わり、同時に何十件も並行してプロジェクトを進めています。しかし著者自身にストレスはなく、チームは円滑に動いており、仕事は順調に進行しているそうです。その理由は、「きちんと「段取り」をしているから」だといいます。
「段取り」において大切にしているのは「ルーティン化」。「仕事の骨格、本質はすべて同じ」というのが著者の考えです。もちろん、ルーティン化というのは、やっつけ仕事とは違います。仕事をルーティン化するからこそ、「アウトプットのレベルが上がる」と述べています。
まず本書では、仕事を3つに大別します。
1、「目的地を決める」
2、「目的地までの地図を描く」
3、「目的地まで歩く」
1の「目的地を決める」では、「正しい目的地」を定めることの大切さを説きます。たとえば、「くまもとサプライズ」というプロジェクトの例が紹介されています。著者が依頼されたのは、ロゴのデザインでした。プレゼンまでにロゴを完成させますが、それにとどまらず、「プロジェクトの完成形をビジュアルでリアルに想像」した結果、クマのキャラクターを提案することにします。「くまモン」の誕生ですが、それに至る思考過程が記されています。
他にも、「東京ショコラファクトリー」や「相模鉄道(相鉄)」など、手がけたプロジェクトの例を交えて、「目的地を決める」ことの重要性を具体的に示しています。
2の「目的地までの地図を描く」では、上述した「仕事はルーティン」という考えを伝えることから始めています。デザインの仕事、企画書を作る、料理や旅行など、すべてのものごとは「ほぼルーティンであり「型」にはめることができ」るといいます。ルーティン化の重要性を示してから、情報収集およびコンセプトを決めることの大切さを、相鉄や茅乃舎のケースを交えて説明しています。
3の「目的地まで歩く」では、「時間」にフォーカスし、「段取りの組み方」について述べられます。段取りのコツとして著者がおすすめしているのは、「すべての仕事を「時間」ではかる」ということ。「精神的な重い・軽い」で仕事をはかるのではなく、「「短時間で終わる仕事」と、「長くかかる仕事」という目安で、やるべきことをはかる」のだといいます。また、段取りは、「つねに変わるもの」であり、「見直し」を続けることの必要性も記されています。
本書は、著者・水野学氏の段取りに関する考え方・具体的なやり方を知ることができる一冊です。