ファーストリテイリングのキャッチコピー(ステートメント)を考察
キャッチコピーの事例を取り上げていく第2回目は、ファーストリテイリングのステートメント(Statement)です。
服を変え、常識を変え、世界を変えていく
2008年に制定されたファーストリテイリンググループの企業理念「FAST RETAILING WAY」に掲げられているステートメントです。とても有名なキャッチコピーの一つですね。コピーライターは前田知巳さん。
このステートメントでは、ファーストリテイリングの基本精神であり、価値観(Value)である「革新と挑戦」を、「変えていく」という言葉で表現したのでしょう。
「FAST RETAILING WAY」の中に、『「革新」とは、過去の常識を疑い、ものを本質から見直して、根底からより良く、そして新しく変えていこうという姿勢です。』という記述があります。これを読むと、「常識を変え」という言葉がキャッチコピーに登場する理由がわかります。
そして、この基本姿勢をグローバル企業として拡大して表現すれば、「世界を変えていく」ということになるのでしょう。「世界」は世の中という意味で使われることもありますが、ビジネスをグローバル展開しているファーストリテイリングであることを考えると、世界各地で「革新」に取り組み、世界の服飾文化を変えていくという意気込みを表したのかなと思います。
もちろん、ユニクロを展開するファーストリテイリングですから、最初に「服を変え」がくるのは納得です。たしかに、ユニクロは「服を変えた」と思います。90年代だったと記憶していますが、はじめてユニクロのフリースを買ったとき、「この値段で、このデザイン・品質ならいいかも」と思ったことを覚えています。当時そのようなバランスの良い服を作り出したのは革新だったという気がします。
このキャッチコピーは、「変え」という言葉を繰り返していますね。第1回目にも書きましたが、やはり同じ言葉を重ねていくというのは、キャッチコピーの作り方の一つの手法と言ってよさそうです。
同じ言葉を繰り返すといっても、『服を変え、常識を変えていく』ではなく、『服を変え、世界を変えていく』でもなく、『服を変え、常識を変え、世界を変えていく』というように、ホップ・ステップ・ジャンプみたいな跳躍感が良いです。最後に「世界」とバーンと飛んでいく感じがグローバル企業にふさわしい感じですね。このキャッチコピーを魅力的にしているのは、この跳躍感ではないでしょうか。それと二つだとリズム感が出ていないけれど、三つだとリズム感もありますね。「服を変え」の文が短いから、三回繰り返せるし、そのほうがリズム感が出るのかなと思いました。
三回繰り返して跳躍感を出す。これも、キャッチコピーの一つのテクニックと言えそうです。